こんにちは、小豆島のマルカツ製麺所です。
スーパーの麺売り場に立つと、不思議に思うことはありませんか?
「同じような白い麺なのに、なぜ100円の袋と、400円以上の袋があるのだろう?」と。
実はその答え、パッケージの裏面にすべて書いてあります。
結論から申し上げますと、価格の差は「ブランド料」ではありません。「切って作った麺」か「延ばして作った麺」かという、物理的な構造の決定的な違いです。
私たちが作る「手延べそうめん」は、グルテン(小麦のタンパク質)を縄のように縒り合わせながら延ばすため、茹でても伸びにくく、ツルッとした独特のコシが生まれます。
この記事を読み終わる頃には、売り場でどのそうめんを選べば、ご家族が「今日のそうめん、いつもと違う!」と驚くような食卓を作れるか、はっきりと分かるようになりますよ。
職人が教える「美味しいそうめん」を見分ける早見ヒント

時間がない時は、パッケージの裏面を見て、以下の3点だけチェックしてください。これだけで、食感における失敗はほぼなくなります。
- 【名称】に「手延べそうめん」とあるか?
- 単に「そうめん」とだけ書かれている場合は、機械で刃物を使って切った「機械麺」であることが多いです。独特の歯ごたえを求めるなら「手延べ」一択です。
- 【原材料】に「食用植物油(またはごま油)」があるか?
- 手延べ製法には、麺の乾燥を防ぎ、くっつかないようにするために油が必須です。特に小豆島手延べそうめんは「ごま油」を使うのが伝統で、これが風味と酸化しにくい特長を生みます。
- 【麺の束】が紙帯で巻かれているか?
- 多くの手延べ麺は、生産者の責任の証として、一束ごとに帯が巻かれています(私たちなら「赤帯」「黒帯」など)。
「切る」と「延ばす」。食感の正体は繊維の向きにあり
刃物を通さないから、喉越しがつながる
なぜ「手延べ」が美味しいと言われるのか。それは味付けではなく、麺の「繊維構造」が違うからです。
一般的な機械製麺は、うどんのように生地を平らにして、包丁(カッター)で細く切り出します。これをすると、小麦のグルテン繊維はそこでプツリと切断されます。
一方、私たちが冬の寒い工場で行う「手延べ」は違います。
太い一本の生地を、ねじって、休ませて、またねじって……と、何度も繰り返しながら細くしていきます。刃物は一切使いません。
こうすることで、小麦の繊維がきれいに一方向に整列し、まるで「極細のロープ」のような構造になります。
箸で持ち上げた時のしなやかな揺れや、口に入れた瞬間に抵抗なく喉の奥へ滑り落ちていく感覚(喉越し)は、この「切れていない繊維」のおかげなのです。

極寒の早朝が生む「コシ」
私たち職人の朝は早いです。冬場であれば、まだ日が昇らない深夜2時、3時から仕込みが始まります。
「なぜそんなに寒い時期に?」と聞かれますが、そうめんは生き物だからです。
気温が高すぎると発酵が進みすぎてダレてしまい、乾燥しすぎると表面が割れてしまいます。
小豆島の冬の、あの身を切るような冷たく乾燥した風。
指先の感覚がなくなるほどの寒さの中で、生地をゆっくりと熟成させる(寝かせる)ことで、茹でても煮崩れしない、あの強いコシが育つのです。

【マルカツ製麺所だより】「音」と「箸」で会話する
私たちの工場では、乾燥工程の仕上げに「箸分け(はしわけ)」という作業を行います。
2本の長い箸を使い、乾燥してくっつきそうになっている麺同士を、さばいて離していく作業です。
この時、私たちは麺の「音」を聞いています。
箸を入れると、麺同士が触れ合って「シャラシャラ……」という、乾いた高い音が鳴ります。湿度が少しでも高い日や、乾燥が不十分な時は、この音が鈍くなります。
「今日はちょっと機嫌が悪いな」
「今日は最高の肌ツヤをしているな」
毎日同じことをしているようで、麺は毎日違います。
機械の数値設定だけでは分からない微妙な変化を、職人が一本一本、手と目と耳で確認し、合格したものだけを「マルカツの麺」として送り出しています。
この検品の手間こそが、ご家庭で茹でた時の「失敗のなさ」に直結すると信じているからです。

よくあるご質問(FAQ)
そうめんについて、お客様からよくいただくご質問にお答えします。
Q:手延べそうめんは、茹で方が難しくないですか?
A: 実は機械麺より伸びにくいので、扱いやすいです。
ポイントは「たっぷりのお湯」を使うこと。麺が泳ぐくらいのお湯で茹で、再沸騰したらすぐにザルに上げ、冷水で「これでもか」というほど揉み洗いしてください。ぬめりを取ることで、本来のコシが出ます。
Q:賞味期限はどれくらいですか?
A: 手延べそうめんは保存食としても優秀で、常温で2〜3年は持ちます。
むしろ、梅雨を越して熟成させたものを「古物(ひねもの)」と呼び、コシが強くなり珍重される文化もあります。湿気の少ない冷暗所であれば、長く楽しんでいただけます。
Q:スーパーで買うのと、製麺所から直接買うのは何が違いますか?
A: もしよろしければ、一度「工場直送」を試してみてください。
スーパー等の流通網に乗る麺ももちろん美味しいですが、倉庫や店頭での保管状況によっては、香りが飛んだり湿気を吸ったりすることがあります。
私たちマルカツ製麺所の直販(LP)では、職人が管理する最適な環境で保管され、検品を終えたばかりの「一番良い状態」の麺を、小豆島から直接お届けしています。飾り気はありませんが、味の鮮度には自信があります。
最後に小豆島のマルカツ製麺所から
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ここ小豆島では、今日も瀬戸内の穏やかな日差しと、麺を鍛える厳しい風が吹いています。
私たちは、派手な広告を打つような大きな会社ではありません。
ただ、先代から受け継いだ技を守り、毎日粉まみれになりながら、正直に麺を延ばし続ける。それが私たちの仕事であり、誇りです。
もし、あなたが「今日は本当に美味しいものを食べて、家族を喜ばせたい」と思ったり、大切な方への贈り物に迷ったりした時は、私たちのことを思い出してください。
工場から出したばかりの、飾り気はないけれど、作り手の体温が通ったそうめんをご用意して、ここでお待ちしています。
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