「そうめんを茹でたら、思ったよりしょっぱかった」「減塩中だけれど、そうめんは食べていいの?」「茹でるお湯に塩は入れるべき?」
そうめんの「塩」について、お客様からこうしたご質問をよくいただきます。
結論から申し上げますと、そうめんの生地には確かに塩が使われていますが、湯がくと塩分はほぼ抜けます。茹でる過程でお湯に溶け出し、流水で揉み洗いをすることでさらに減るからです。ですから、茹でるお湯に塩を足す必要はありませんし、正しく茹でて洗えば、塩分を気にされている方にも安心して召し上がっていただけます。
この記事では、小豆島で日々麺と向き合う私たちマルカツ製麺所の職人が、「なぜそうめんに塩を使うのか」「茹でるとどれだけ抜けるのか」「減塩したい方はどこに気をつければよいのか」を、製造現場の視点でお伝えします。

【早見表】そうめんの塩分、ここだけ押さえれば大丈夫
- そうめんに塩を使うのは味付けのためではなく、生地を細く延ばすために必要だから。
- 塩の大部分は茹でるときにお湯へ溶け出す。茹で汁は捨てる。
- 茹でた後は流水で「揉み洗い」。ぬめりと一緒に、残った塩もさらに落ちる。
- 茹でるお湯に塩は入れない(パスタとは違います)。
- 塩分が気になる方は、麺よりも「つゆの量」と「つゆの濃さ」を意識する。
なぜ、そうめんには塩が使われているのか
そうめんの材料は、小麦粉・塩・水、そして小豆島の場合は「ごま油」という、とてもシンプルなものです。この中で「塩」は、単なる味付けではありません。
そうめん作りにおいて、「塩」は単なる味付けではなく、小麦のグルテン(コシの素)を引き出し、生地が切れないようにするための重要な役割を担っています。手延べそうめんは、生地を撚りながら何度も細く延ばしていきます。塩が入っていない生地では、延ばしている途中でプツプツと切れてしまい、髪の毛ほどの細さまで延ばすことができません。つまり塩は、あの細さと強いコシを実現するために、なくてはならない材料なのです。
そして製麺所にとって塩は、「その日の気温に合わせて、麺の延び具合を調整するための道具」でもあります。気温が高い日と低い日では、同じ生地でも延び方がまるで違います。それを塩の量で整えるのです。詳しくは、下の職人の声でお話しします。

茹でると、塩分はどれくらい抜けるのか
「生地に塩が入っているなら、食べたら全部体に入るのでは」と心配される方がいますが、そうではありません。塩は水に溶けやすいため、たっぷりのお湯で茹でると、その大部分がお湯の中へ出ていきます。
目安として、文部科学省の「日本食品標準成分表」では、手延べそうめんの食塩相当量は、乾麺100gあたり約5.8g、茹でた後は100gあたり約0.3gとされています。茹でると重さが約2.7倍に増えることを考えても、1人前(乾麺2束・約100g)を茹でて食べたときに麺そのものから摂る塩分は、おおよそ1g前後にとどまる計算です。
| 状態 | 食塩相当量の目安(100gあたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 乾麺(茹でる前) | 約5.8g | 生地を延ばすために必要な塩 |
| 茹でた後 | 約0.3g | 大部分がお湯へ溶け出す |
※ 日本食品標準成分表(手延そうめん)の値をもとにした目安です。商品や茹で方によって前後します。
ですから、そうめんの塩分で気にしていただきたいのは、麺そのものよりも「めんつゆ」です。つゆをたっぷり張って麺をどっぷり浸けて食べると、麺からの塩分よりも、つゆからの塩分のほうがずっと多くなります。
塩をきちんと抜くための、2つの手順
1. たっぷりのお湯で茹でる(塩は入れない)
麺100g(約2束)に対して、最低でも水1リットルを用意する。お湯が少ないと、溶け出した塩とデンプンで茹で汁が濃くなり、麺に戻ってしまいます。パスタのようにお湯へ塩を入れる必要はありません。そうめんは生地の段階ですでに塩を含んでいるからです。
2. 流水で「揉み洗い」をする
茹で上がったそうめんをザルにあげたら、ここからが一番大切な時間です。流水の下で、両手を使って麺をこすり合わせるように、しっかりと「揉み洗い」をしてください。
「そんなに強く揉んだら、細いそうめんがちぎれてしまうのでは?」と心配されるかもしれません。しかし、本物の手延べそうめんは、職人が何度も撚り(より)をかけて鍛え上げているため、ちょっとやそっとの力では切れません。
洗い始めは表面がぬるぬるとして白く濁った水が出ますが、揉み洗いを続けると次第に水が澄んできます。このぬめりの中に、麺を延ばすために使われた「塩分」と「油分」が含まれています。手のひらで感じる感触が、ぬるっとしたものから「キュッ」と引き締まった感触に変わる瞬間が、塩が抜けきった合図です。最後に氷水でサッと締めれば、真珠のように輝く極上のそうめんの完成です。

【マルカツ製麺所だより】私たちの工場で調整する「塩」の役割
私たちの工場では、毎日同じ分量で小麦に塩水を混ぜているわけではありません。
小豆島の厳しい冬の寒さの中では、生地が硬くなりすぎないように塩分を少し控えめに。逆に少し暖かい日は、生地がだれないように塩をしっかりと利かせます。
職人がその日の気温や湿度、風の冷たさを肌で感じ取り、長年の感覚を頼りに塩加減を微調整しているのです。だからこそ、お客様の手元に届き、お鍋で茹でて「塩抜き」をしていただいたその瞬間に、私たちが計算し尽くした「最高のコシ」と「小麦の甘み」が花開くようになっています。
【職人の声】塩は「味」ではなく、その日の気温に合わせた「調整役」です
そうめんに塩を使う理由をよく聞かれますが、私たちにとって塩は味付けではありません。製造のときに塩を使うのは、気温の高い低いによって、そうめんの延び具合を調整するためです。気温が高い日は生地がだれやすく、低い日は締まって延びにくい。それを塩の量で整えます。ですから塩の量は決まった分量ではなく、毎日の気温の変化に合わせて変えています。あとは、経験です。何年も麺を延ばしていると、その日の空気で「今日はこのくらい」というのが分かるようになります。
「塩分が心配」というお客様には、いつもこうお答えしています。湯がくと、塩分はほぼ抜けます。製造で使った塩は、茹でるお湯の中に出ていきます。ですから麺の塩分を気にするより、めんつゆの量を少し控えていただくほうが、よほど効果があります。
よくあるご質問
Q:パスタのように、茹でる時にお湯に塩を入れたほうがいいですか?
A:いいえ、そうめんは製造工程ですでに塩を含んでいるため、茹でる際のお湯に塩は不要です。たっぷりのお湯だけで茹でて、しっかり塩を抜くのが美味しく食べるコツです。
Q:茹でたそうめんがしょっぱく感じます。なぜですか?
A:お湯が少なかったか、揉み洗いが足りなかった可能性が高いです。お湯を1リットル以上に増やし、茹で上がりを流水でしっかり揉み洗いしてみてください。茹で汁をそのままつゆに使う、あるいは茹でた麺を洗わずに温かい出汁に入れると、塩分が汁に残って塩辛くなります。
Q:温かい「にゅうめん」にする時も、一度冷水で洗う必要がありますか?
A:はい、必ず一度冷水で揉み洗いをしてください。そのまま出汁に入れて煮込んでしまうと、麺から出た塩分とぬめりで汁がドロドロになり、味も塩辛くなってしまいます。一度水で締めてから温かい汁に入れることで、表面がつるりとした美味しいにゅうめんになります。
Q:減塩中です。そうめんは食べても大丈夫ですか?
A:正しく茹でて洗えば、麺そのものから摂る塩分は多くありません。気をつけていただきたいのは、めんつゆです。つゆは薄めに作り、麺を浸けすぎない「ぶっかけ」より「つけ」で量を控える、薬味やごま油の香りで物足りなさを補う、といった工夫がおすすめです。持病で塩分制限を受けている方は、かかりつけの医師や管理栄養士の指示に従ってください。
Q:コツは分かったのですが、どうしてもお店のような強いコシが出ません。どうすればいいですか?
A:手前味噌ですが…もし、何度試してもご納得いくコシや風味に出会えない場合は、ぜひ私たちマルカツ製麺所の直営サイトから、職人仕込みの「手延べそうめん」をお試しください。機械打ちの麺ではどうしても再現できない、小豆島の伝統技法ならではの強い弾力と喉越しを、工場直送の最も良い状態でお届けいたします。ご家庭での茹で上がりが見違えるはずです。
【最後に:小豆島のマルカツ製麺所から】

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
私たちが作るそうめんは、小豆島の澄んだ空気、瀬戸内の穏やかな日差し、そして冬の身を切るような寒風といった、厳しい自然の恵みが育ててくれたものです。職人たちはその自然と日々向き合い、時に翻弄されながらも、真摯に生地との対話を続けています。
私たちは明日も変わらず、この小豆島の静かな製麺所で、粉まみれになりながら麺を作り続けます。
もし、この記事を読んで「美味しいそうめんが食べたいな」とふと思い出してくださった時は、いつでもお声がけください。
工場から出したばかりの、飾り気はないけれど一番美味しい状態の麺をご用意して、皆様をお待ちしております。
ツルッとした喉越しに、しっかりしたコシ。100年、生地を細く伸ばし続けた手延べの“違い”を毎日の食卓で。
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