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記事の監修:マルカツ製麺所 代表・職人 三木 政人

マルカツ製麺所は、瀬戸内海・小豆島で100年以上、手延べ素麺ひと筋の製麺所です。明治23年(1890年)には「第三回内国勧業博覧会」で三等有功賞を受賞。厳選した小麦と清らかな水を使い、代々受け継いだ手延べ製法でコシと喉ごしにこだわった自家製素麺をつくり続け、産地直送で食卓に届けています。

そうめんの塩分は茹でると抜ける?――職人が答える、塩を使う理由と減塩のコツ

茹で方・レシピ
そうめんの塩分は茹でると抜ける?――職人が答える、塩を使う理由と減塩のコツ

「そうめんを茹でたら、思ったよりしょっぱかった」「減塩中だけれど、そうめんは食べていいの?」「茹でるお湯に塩は入れるべき?」

そうめんの「塩」について、お客様からこうしたご質問をよくいただきます。

結論から申し上げますと、そうめんの生地には確かに塩が使われていますが、湯がくと塩分はほぼ抜けます。茹でる過程でお湯に溶け出し、流水で揉み洗いをすることでさらに減るからです。ですから、茹でるお湯に塩を足す必要はありませんし、正しく茹でて洗えば、塩分を気にされている方にも安心して召し上がっていただけます。

この記事では、小豆島で日々麺と向き合う私たちマルカツ製麺所の職人が、「なぜそうめんに塩を使うのか」「茹でるとどれだけ抜けるのか」「減塩したい方はどこに気をつければよいのか」を、製造現場の視点でお伝えします。

自宅の台所で鍋のそうめんを菜箸で茹でる女性

【早見表】そうめんの塩分、ここだけ押さえれば大丈夫

  • そうめんに塩を使うのは味付けのためではなく、生地を細く延ばすために必要だから。
  • 塩の大部分は茹でるときにお湯へ溶け出す。茹で汁は捨てる。
  • 茹でた後は流水で「揉み洗い」。ぬめりと一緒に、残った塩もさらに落ちる。
  • 茹でるお湯に塩は入れない(パスタとは違います)。
  • 塩分が気になる方は、麺よりも「つゆの量」と「つゆの濃さ」を意識する。

なぜ、そうめんには塩が使われているのか

そうめんの材料は、小麦粉・塩・水、そして小豆島の場合は「ごま油」という、とてもシンプルなものです。この中で「塩」は、単なる味付けではありません。

そうめん作りにおいて、「塩」は単なる味付けではなく、小麦のグルテン(コシの素)を引き出し、生地が切れないようにするための重要な役割を担っています。手延べそうめんは、生地を撚りながら何度も細く延ばしていきます。塩が入っていない生地では、延ばしている途中でプツプツと切れてしまい、髪の毛ほどの細さまで延ばすことができません。つまり塩は、あの細さと強いコシを実現するために、なくてはならない材料なのです。

そして製麺所にとって塩は、「その日の気温に合わせて、麺の延び具合を調整するための道具」でもあります。気温が高い日と低い日では、同じ生地でも延び方がまるで違います。それを塩の量で整えるのです。詳しくは、下の職人の声でお話しします。

沸騰したたっぷりのお湯で茹でられる手延べそうめん

茹でると、塩分はどれくらい抜けるのか

「生地に塩が入っているなら、食べたら全部体に入るのでは」と心配される方がいますが、そうではありません。塩は水に溶けやすいため、たっぷりのお湯で茹でると、その大部分がお湯の中へ出ていきます。

目安として、文部科学省の「日本食品標準成分表」では、手延べそうめんの食塩相当量は、乾麺100gあたり約5.8g、茹でた後は100gあたり約0.3gとされています。茹でると重さが約2.7倍に増えることを考えても、1人前(乾麺2束・約100g)を茹でて食べたときに麺そのものから摂る塩分は、おおよそ1g前後にとどまる計算です。

状態食塩相当量の目安(100gあたり)備考
乾麺(茹でる前)約5.8g生地を延ばすために必要な塩
茹でた後約0.3g大部分がお湯へ溶け出す

※ 日本食品標準成分表(手延そうめん)の値をもとにした目安です。商品や茹で方によって前後します。

ですから、そうめんの塩分で気にしていただきたいのは、麺そのものよりも「めんつゆ」です。つゆをたっぷり張って麺をどっぷり浸けて食べると、麺からの塩分よりも、つゆからの塩分のほうがずっと多くなります。

塩をきちんと抜くための、2つの手順

1. たっぷりのお湯で茹でる(塩は入れない)

麺100g(約2束)に対して、最低でも水1リットルを用意する。お湯が少ないと、溶け出した塩とデンプンで茹で汁が濃くなり、麺に戻ってしまいます。パスタのようにお湯へ塩を入れる必要はありません。そうめんは生地の段階ですでに塩を含んでいるからです。

2. 流水で「揉み洗い」をする

茹で上がったそうめんをザルにあげたら、ここからが一番大切な時間です。流水の下で、両手を使って麺をこすり合わせるように、しっかりと「揉み洗い」をしてください。

「そんなに強く揉んだら、細いそうめんがちぎれてしまうのでは?」と心配されるかもしれません。しかし、本物の手延べそうめんは、職人が何度も撚り(より)をかけて鍛え上げているため、ちょっとやそっとの力では切れません。

洗い始めは表面がぬるぬるとして白く濁った水が出ますが、揉み洗いを続けると次第に水が澄んできます。このぬめりの中に、麺を延ばすために使われた「塩分」と「油分」が含まれています。手のひらで感じる感触が、ぬるっとしたものから「キュッ」と引き締まった感触に変わる瞬間が、塩が抜けきった合図です。最後に氷水でサッと締めれば、真珠のように輝く極上のそうめんの完成です。

茹で上げたそうめんをザルに入れ流水で揉み洗いする手元

【マルカツ製麺所だより】私たちの工場で調整する「塩」の役割

私たちの工場では、毎日同じ分量で小麦に塩水を混ぜているわけではありません。

小豆島の厳しい冬の寒さの中では、生地が硬くなりすぎないように塩分を少し控えめに。逆に少し暖かい日は、生地がだれないように塩をしっかりと利かせます。

職人がその日の気温や湿度、風の冷たさを肌で感じ取り、長年の感覚を頼りに塩加減を微調整しているのです。だからこそ、お客様の手元に届き、お鍋で茹でて「塩抜き」をしていただいたその瞬間に、私たちが計算し尽くした「最高のコシ」と「小麦の甘み」が花開くようになっています。

【職人の声】塩は「味」ではなく、その日の気温に合わせた「調整役」です

そうめんに塩を使う理由をよく聞かれますが、私たちにとって塩は味付けではありません。製造のときに塩を使うのは、気温の高い低いによって、そうめんの延び具合を調整するためです。気温が高い日は生地がだれやすく、低い日は締まって延びにくい。それを塩の量で整えます。ですから塩の量は決まった分量ではなく、毎日の気温の変化に合わせて変えています。あとは、経験です。何年も麺を延ばしていると、その日の空気で「今日はこのくらい」というのが分かるようになります。

「塩分が心配」というお客様には、いつもこうお答えしています。湯がくと、塩分はほぼ抜けます。製造で使った塩は、茹でるお湯の中に出ていきます。ですから麺の塩分を気にするより、めんつゆの量を少し控えていただくほうが、よほど効果があります。

よくあるご質問

Q:パスタのように、茹でる時にお湯に塩を入れたほうがいいですか?

A:いいえ、そうめんは製造工程ですでに塩を含んでいるため、茹でる際のお湯に塩は不要です。たっぷりのお湯だけで茹でて、しっかり塩を抜くのが美味しく食べるコツです。

Q:茹でたそうめんがしょっぱく感じます。なぜですか?

A:お湯が少なかったか、揉み洗いが足りなかった可能性が高いです。お湯を1リットル以上に増やし、茹で上がりを流水でしっかり揉み洗いしてみてください。茹で汁をそのままつゆに使う、あるいは茹でた麺を洗わずに温かい出汁に入れると、塩分が汁に残って塩辛くなります。

Q:温かい「にゅうめん」にする時も、一度冷水で洗う必要がありますか?

A:はい、必ず一度冷水で揉み洗いをしてください。そのまま出汁に入れて煮込んでしまうと、麺から出た塩分とぬめりで汁がドロドロになり、味も塩辛くなってしまいます。一度水で締めてから温かい汁に入れることで、表面がつるりとした美味しいにゅうめんになります。

Q:減塩中です。そうめんは食べても大丈夫ですか?

A:正しく茹でて洗えば、麺そのものから摂る塩分は多くありません。気をつけていただきたいのは、めんつゆです。つゆは薄めに作り、麺を浸けすぎない「ぶっかけ」より「つけ」で量を控える、薬味やごま油の香りで物足りなさを補う、といった工夫がおすすめです。持病で塩分制限を受けている方は、かかりつけの医師や管理栄養士の指示に従ってください。

Q:コツは分かったのですが、どうしてもお店のような強いコシが出ません。どうすればいいですか?

A:手前味噌ですが…もし、何度試してもご納得いくコシや風味に出会えない場合は、ぜひ私たちマルカツ製麺所の直営サイトから、職人仕込みの「手延べそうめん」をお試しください。機械打ちの麺ではどうしても再現できない、小豆島の伝統技法ならではの強い弾力と喉越しを、工場直送の最も良い状態でお届けいたします。ご家庭での茹で上がりが見違えるはずです。

【最後に:小豆島のマルカツ製麺所から】

小さな港と山並みが見える穏やかな瀬戸内の海辺

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

私たちが作るそうめんは、小豆島の澄んだ空気、瀬戸内の穏やかな日差し、そして冬の身を切るような寒風といった、厳しい自然の恵みが育ててくれたものです。職人たちはその自然と日々向き合い、時に翻弄されながらも、真摯に生地との対話を続けています。

私たちは明日も変わらず、この小豆島の静かな製麺所で、粉まみれになりながら麺を作り続けます。

もし、この記事を読んで「美味しいそうめんが食べたいな」とふと思い出してくださった時は、いつでもお声がけください。

工場から出したばかりの、飾り気はないけれど一番美味しい状態の麺をご用意して、皆様をお待ちしております。

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