「小豆島のそうめんなら、どれも同じ『島の光』ではないのですか?」
私たち職人が、お客様から一番よくいただくご質問かもしれません。 結論から申し上げますと、「素材は同じでも、作り手(製麺所)によって味や食感の個性は生まれる」というのが、現場の偽らざる実感です。
組合で厳格に定められた素材を使いながら、なぜ違いが生まれるのか。 今日は、私たちマルカツ製麺所の工場(こうば)の様子を少しだけお見せしながら、本当に美味しいそうめんとの出会い方についてお話しさせてください。この記事を読み終える頃には、きっとあなた好みの「本物の味」の選び方がわかっているはずです。

職人が教える「美味しいそうめん」を見極める3つのヒント
まずは、私たち作り手が「今日の麺は良い出来だ」と判断する時の基準を、わかりやすくリストにしました。
- ツヤと輝き: 茹で上がった麺が、光を反射してキラキラと輝いているか(油の馴染み具合が良い証拠です)。
- 「コシ」の質: ただ硬いだけでなく、噛んだ瞬間にモチッとした弾力があり、プツンと心地よく切れるか。
- 香りの立ち方: 茹でている最中に、小麦とごま油の甘く芳醇な香りが湯気とともに立つか。
素材は同じ「譜面」。演奏するのは「職人」です
1. 「島の光」という厳格なルールの下で
小豆島手延べそうめん「島の光」を名乗るためには、組合が定めた厳しい基準をクリアしなければなりません。 使用する小麦粉、塩、そして小豆島特有のかどや製油のゴマ油。これらはすべて指定された一級品を使います。つまり、「譜面(レシピ)」は全製麺所で共通なのです。
しかし、同じ譜面でも演奏家によって音色が変わるように、そうめんもまた、製麺所ごとの「解釈」と「手癖」によって、その表情を少しずつ変えます。
2. 私たちマルカツ製麺所だより 〜早朝5時の対話〜
「昨日の雨で、空気が少し重いな」
マルカツ製麺所の朝は、まだ星が出ている早朝5時から始まります。 私たちが最も神経を研ぎ澄ますのは、機械のスイッチを入れる前。工場の扉を開けた瞬間の「肌で感じる湿度」です。
小麦粉と塩水を練り合わせる際、マニュアル通りに水を入れることはありません。 湿度が10%違えば、加える水の量はコンマ数パーセント単位で変わります。気温が低ければ、生地を寝かせる(熟成させる)時間を長く取らなければ、あの独特の「コシ」は生まれません。

- 生地の声を聞く: 手で触れた時、赤ちゃんの耳たぶのような柔らかさの中に、しっかりとした芯があるか。
- ごま油の香り: 延ばす工程で、ごま油が酸化していないフレッシュな香りを放っているか。
これらはデータだけでなく、長年の経験則から来る「指先の感覚」で調整しています。この微細な調整こそが、各製麺所の「味の個性」となって現れるのです。
3. 風を読み、天日(てんぴ)を味方につける
小豆島の冬、瀬戸内海から吹き付ける寒風は、そうめんを乾燥させるのに最高の条件です。しかし、風が強すぎれば麺は割れ、弱すぎれば締まりません。
私たちは「はた」と呼ばれる干し場に麺を広げる際、その日の風向きに合わせて麺の間隔を調整します。 白く長い麺が、風になびいてサラサラと布擦れのような音を立てる時。この音が軽やかであればあるほど、喉越しの良いそうめんになります。

「島の光」というブランドを守りつつ、「やっぱりマルカツさんの麺は喉越しが違うね」と言っていただけるよう、私たちは今日も自然と対話しながら微調整を繰り返しています。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 「特級品(黒帯)」と「上級品(赤帯)」、味の違いは大きいですか?
A. はい、明確に違います。 黒帯は、寒さが最も厳しい12月〜1月の極寒期に製造されたものに限られ、熟練の職人が指定されています。麺がより細く、それでいてコシが強いのが特徴です。ご贈答用や、ここぞという時の食卓には「黒帯」をおすすめしています。
Q. 製麺所によって賞味期限は違いますか?
A. 基本的には同じです。 適切に保管(高温多湿を避ける)していただければ、製造から2〜3年は美味しく召し上がれます。実は、1〜2年寝かせた「古物(ひねもの)」は、油が馴染んでコシが増し、通好みの味になるとも言われています。
Q. 特定の製麺所のそうめんを指定して買うことはできますか?
A. 一般的なスーパーでは難しいのが現状です。 スーパーなどで販売されている「島の光」は、各製麺所の麺が組合で集約されて出荷されるため、製造者を指定することは基本的にはできません。 もし、「職人のこだわりによる個性の違い」や、私たちの工場で作った「できたての味」を試してみたいと思われましたら、製麺所が直接運営している直販サイト(産地直送)をご利用いただくのが、間違いのない最短ルートです。
最後に小豆島のマルカツ製麺所から
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
小豆島は今、海からの風が少しずつ季節の香りを運んできています。 私たちは、この島で数百年続いてきた伝統を守りながら、同時に「もっと美味しくなるはずだ」という探究心を持って、毎日麺と向き合っています。
同じ「島の光」であっても、職人の息遣いや、その日の天候との格闘の末に生まれた麺には、やはり特別な味わいが宿ると信じています。
もし、あなたが「失敗したくない」「作り手の顔が見える安心なそうめんを食べたい」と思われたなら、ぜひ一度、私たちの工場の麺を味わってみてください。 飾り気はありませんが、工場から出したばかりの、一番良い状態の麺をご用意して、あなたをお待ちしております。
マルカツ製麺所の「現在のラインナップ(直販)」を見てみる →https://marukatsu-seimen.com/