はじめに:そうめんの常識が、一口で変わる瞬間
「そうめんといえば、夏の暑い日に食べる、喉越しの良い乾麺」 もしあなたがそう思われているなら、少しだけ驚かせてしまうかもしれません。
私たち作り手にとって、「生そうめん(なまそうめん)」は、乾麺とはまったく別の食べ物です。 最大の違いは、まるで赤ちゃんのほっぺたのような、弾力のある「もちもち感」。そして、口いっぱいに広がる小麦本来の甘い香りです。
「今まで食べていたそうめんは何だったんだ?」 初めて生そうめんを口にされたお客様から、そんなお声をいただくことも少なくありません。この記事では、普段なかなか市場に出回らない「生そうめん」の魅力と、職人である私たちがこっそり楽しんでいる「一番美味しい食べ方」をお伝えします。

職人が教える「生そうめん」美味しく食べる3つのヒント
まずは、生そうめんの特性を活かすためのポイントをまとめました。
- 茹で時間は一瞬の勝負: 乾麺よりも水分を含んでいるため、茹で時間は驚くほど短め(約2分前後)。目を離さないのが鉄則です。
- 「ぬめり」は旨味の裏返し: 小麦の風味が強い分、茹でた後の水洗いでしっかりぬめりを取ると、ツルッとした喉越しともっちり感が際立ちます。
- まずは「塩」だけで: つゆにつける前に、麺そのものを味わってみてください。小麦の香りの立ち方が違います。
「コシ」ではなく「弾力」。乾麺にはない食感の正体
一般的な乾麺のそうめんは、時間をかけて乾燥・熟成させることで、あのパキッとした硬質の「コシ」が生まれます。これはこれで素晴らしい食文化です。
しかし、生そうめんは乾燥の工程を経ません。 そのため、水分をたっぷりと含んだ麺の繊維が、茹で上がった瞬間にふっくらと膨らみます。歯を入れた瞬間は柔らかく感じるのに、噛み締めるとググッと押し返してくるような弾力がある。これこそが、私たちが「もちもち」と呼ぶ食感の正体です。
半透明に輝く麺を啜り上げると、口の中が生きた麺の踊り場になったような、乾麺では決して味わえない体験が待っています。

【マルカツ製麺所だより】早朝5時、生地の「呼吸」を聴く
私たちの工場(こうば)の朝は早いです。というより、まだ星が出ている深夜から始まります。
生そうめんは、乾燥させない分、「加水(水加減)」と「練り」のごまかしが一切ききません。その日の小豆島の気温、湿度、そして風の匂いを感じ取りながら、塩水の濃度をコンマ単位で調整します。
特に神経を使うのが、生地を休ませる「熟成」の時間です。 工場の中で静かに寝かせている生地に耳を澄ますと、発酵が進み、生地が呼吸しているような気配を感じることがあります。この熟成が足りないと粉っぽくなり、進みすぎると麺がダレてしまう。
「今だ」という瞬間を見極め、包丁で切り出した直後の麺は、ほんのりと温かく、小麦の芳醇な香りが工場いっぱいに充満します。この「一番香りが高い状態」をそのままパックに閉じ込めること。これが、私たちマルカツ製麺所のこだわりです。

職人直伝。究極の食べ方は「オリーブオイルと塩」
では、この生そうめん、どう食べるのが一番美味しいのか。 私たち職人が仕事の合間の賄い(まかない)で食べる、とっておきの方法をご紹介します。それは、「オリーブオイルと岩塩」だけで食べる、というものです。
- 茹で上げて冷水で締めた生そうめんを皿に盛る。
- 上質なオリーブオイルをひと回し。
- 少量の岩塩をパラリと振る。
- (お好みで)レモンを少し絞る。
これだけです。 醤油や出汁(だし)を使わないことで、生そうめん特有の小麦の甘みがダイレクトに脳に届きます。もちもちとした食感とオイルが絡み合い、まるで極上の生パスタを食べているような感覚になります。小豆島の職人だからこそ知る、贅沢な楽しみ方です。
よくあるご質問(FAQ)
お客様からよくいただくご質問にお答えします。
Q:賞味期限はどのくらいですか? A: 乾燥させていないため、乾麺に比べると短くなります。常温で保存できるものもありますが、開封後は「生もの」としてお早めにお召し上がりいただくのが一番美味しい状態です。
Q:茹でるのが難しそうで心配です。 A: ご安心ください。たっぷりのお湯に入れて、再沸騰したらすぐにザルにあけるだけなので、むしろ乾麺より手早く調理できます。袋の裏面に職人推奨の正確な時間を記載しています。
Q:生そうめんは、近所のスーパーではあまり見かけませんが…? A: はい、そこが心苦しい点でもあります。 実は、生そうめんは鮮度管理が難しく、一般的な流通ルート(スーパーなどの量販店)に乗せることが非常に難しい商品です。「本当に美味しい状態」でお届けするには、作りたてを工場から直送するのが一番確実なのです。
手前味噌で恐縮ですが、私たちマルカツ製麺所では、職人が納得した出来栄えの麺だけを、工場からお客様のご自宅へ直接お届けする仕組みをとっております。「失敗のない、本物の生そうめん体験」をお探しでしたら、ぜひ一度、私たちの直販サイトを覗いてみてください。
最後に:小豆島のマルカツ製麺所から
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「たかがそうめん、されどそうめん」 私たちが毎朝、粉と水に向き合い続けているのは、お客様が一口食べた瞬間に「わあっ」と驚く顔を想像しているからです。
文章でお伝えできることには限りがあります。 あの「もちもち」とした食感と、鼻に抜ける小麦の香りは、実際に食べていただいて初めて完成するものです。
もし、今夜の食卓で「今までにない体験」をしてみたいと思われましたら、ぜひ一度、私たちの自信作を味わってみてください。