スーパーの棚に並ぶたくさんのそうめんを前に、「どれを選べばいいんだろう」と立ち止まってしまったことはありませんか。贈り物でいただいた高級そうな木箱を前に、いつもの麺と何が違うのか不思議に思ったこともあるかもしれません。
小豆島で日々麺と向き合う私たち職人は、そうめんを単なる「乾麺」ではなく、その土地の風土と時間が育てる「生き物」のように感じています。この記事を読み終える頃には、パッケージの裏側を見るのが少し楽しみになり、ご家族の好みにぴったりの一品を迷わず選べるようになりますよ。私たちが島で大切に守り続けてきた知恵が、皆さんの健やかな食卓のお役に立てれば、これほど嬉しいことはありません。
用途別の早見ヒント

迷ったときは、まず「どうやって食べるか」を想像してみてください。
- 夏に冷たくツルッと:太さが細めのものを選び、短めのゆで時間でキリッと冷水で締めると、喉越しが際立ちます。
- 冬に温かな「にゅうめん」で:少し太さのあるタイプや、熟成が進んだ「古(ひね)」を選ぶと、熱いお出汁の中でもコシが長持ちして煮崩れしにくいですよ。
- 大切な方への贈り物:パッケージにある「寒仕込み」「二日製法」といった言葉を。冬の澄んだ空気の中で時間をかけて作った証で、贈る方のこだわりが伝わります。
- 量の目安:1人前は「1束(50g)」が基本です。育ち盛りのお子様がいる3名様なら、1食で6束(300g)ほどがちょうど良い目安になりますね。
島の光と風を感じる|小豆島そうめんが「特別」と言われる理由
早朝の製麺所には、小麦の甘い香りと、ほんのりと香ばしいごま油の匂いが満ちています。まだ薄暗いうちから麺を細く引き延ばしていくと、シュッシュッと衣擦れのような音が響き、島に朝が来たことを教えてくれます。

小豆島の手延べそうめんは、全国でも珍しい「かどや製油」さんのごま油を使用して麺を延ばすのが特徴です。この油のおかげで、酸化しにくく(風味が落ちにくい性質)、時間が経っても特有の油臭さが少ない、澄んだ味わいに仕上がります。
【マルカツ製麺所だより】
私たちの製麺所では、その日の気温や湿度に合わせて、塩水の濃度を1%単位で微調整します。自然を相手にする仕事ですから、毎日が真剣勝負。麺の「声」を聞きながら、最適な状態を見極めるのが職人の腕の見せ所なんです。
白いカーテンが揺れる風景|「手延べ」と「機械麺」の確かな違い

冬の小豆島を歩くと、真っ白な麺がカーテンのように干されている光景に出会います。海風に吹かれてゆらゆらと揺れる麺は、まるで生きているかのような弾力。手で触れてみると、見た目以上の力強さと、しっとりとした柔らかな手触りに驚かれるかもしれません。
そうめんには大きく分けて「手延べ」と「機械打ち」があります。手延べは、生地を何度も休ませ(熟成させ)ながら、糸のように細く細く、よりをかけて引き延ばしていく製法です。これにより、麺の断面にグルテンの層がらせん状に形成され、茹でたあとも「プリッ」とした独特のコシと、なめらかな喉越しが生まれます。
裏面の原材料名を見て「食用植物油」の記載があれば、それは手延べ製法の証であることが多いです。一方で機械麺は、生地を薄く伸ばして切る製法。どちらが良い悪いではなく、手延べには「職人の手間と時間」がギュッと凝縮されていると知っていただければ、一口の味わいもまた変わってくるはずです。
黄金色の熟成を見極める|「新物」と「古物」で変わる食感の楽しみ
貯蔵庫の扉を開けると、静かに眠る木箱の香りが鼻をくすぐります。そこには、一冬を越えてじっくりと熟成の時を待つそうめんたちが並んでいます。時間が経つほどに麺の中の成分が変化し、より引き締まった質感へと育っていくのです。
そうめんには、その年に作られた「新物(しんもの)」と、専用の倉庫で一年以上熟成させた「古(ひね)」があります。
- 新物:小麦本来のフレッシュな香りが立ち、食感は比較的柔らかめ。
- 古(ひね):酵素の働きで麺が引き締まり、ゆで伸びしにくく、強いコシが楽しめます。
もし、にゅうめんや炒めもの(ソーミンチャンプルーなど)にするなら、コシが強い「古」を選ぶと失敗が少なくて安心ですよ。パッケージに「古」や「金帯」といった表示があるものが目安になります。
湯気の向こうに笑顔が見える|失敗しないゆで方と、3つのコツ
大きな鍋にたっぷりのお湯が沸き、麺をパラパラと散らした瞬間に広がる真っ白な泡。お箸でそっと泳がせると、麺が透明感を帯びてキラキラと輝き始めます。この「一番美味しい瞬間」を逃さないのが、おうちで職人の味を再現する一番の秘訣です。
おうちで美味しく茹でるために、以下の3つだけ意識してみてください。

- お湯はたっぷりと:麺100gに対して1リットル以上が理想です。お湯が少ないと麺同士がくっつきやすく、温度が下がってコシが逃げてしまいます。
- 差し水(びっくり水)はしない:最近のコンロは火力が強いので、差し水をするとお湯の温度が下がりすぎてしまいます。沸騰してこぼれそうなときは、火を少し弱めるだけで大丈夫ですよ。
- 一番の肝は「もみ洗い」:ゆで上がったらすぐにザルに上げ、流水(できれば氷水)で「これでもか」というくらいゴシゴシと力強く洗ってください。表面のぬめりを取ることで、麺が引き締まり、透き通るような喉越しが生まれます。
まとめ|日々の食卓が、もっと豊かになるヒント
今回お届けしたヒントで、そうめん選びが少しでも楽しい時間になれば、私たちにとってそれ以上の喜びはありません。いつもは何気なく手に取っていた一袋に、職人のこだわりや小豆島の風を感じていただけたら幸いです。
大切なのは、ご自身の舌で「好き」だと感じる一本を見つけることです。今日の知識が、その旅のささやかな道しるべになれば幸いです。細さやコシの違い、産地の流儀などに想いを馳せながら味わう一杯は、きっと格別なものになりますよ。
皆様の食卓が、美味しい笑顔で溢れることを心から願っております。
よくあるご質問(FAQ)

Q. そうめんに賞味期限はありますか?
A. 一般的には製造から2年〜3年ほどとされています。乾麺なので長持ちしますが、匂いを吸いやすい性質があるため、石鹸や香辛料など香りの強いものの近くは避けて、湿気のない場所で保管してくださいね。
Q. 麺が余ってしまった時の保存方法は?
A. 茹でてしまった麺は、水気をよく切って密閉容器に入れ、冷蔵庫へ。翌日なら、お味噌汁の具にしたり、お好みの野菜と炒めて「そうめんチャンプルー」にしたりすると、美味しく無駄なく食べられます。
Q. 贈り物で喜ばれる「良いそうめん」の見分け方は?
A. 「手延べ」という表記があることはもちろんですが、麺の太さが均一で、表面に艶があるものを選んでみてください。また、小豆島産であれば「島の光」というブランドマークがついているものが、厳しい検査をクリアした信頼の証になります。
【最後に:小豆島のマルカツ製麺所から】
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
小豆島にある私たちの小さな製麺所では、今日も変わらず、一本一本のそうめんと向き合っています。もし、私たちのそうめん作りや日々の様子に少しでも興味を持っていただけましたら、製麺所のウェブサイトをいつでも気軽に覗きに来てください。
皆様の夏の食卓が、美味しいそうめんで満たされることを心から願っております。